Hong Kong Tea House

六大茶葉

六大茶葉とは

中国茶は大きく分けて6つに大別されます。「龍井茶」などの緑茶、半発酵の青茶、1度発酵させた後、再度発酵させる後発酵の黒茶、完全発酵の紅茶、微発酵の白茶、独特の方法で茶葉を黄色に変色させる黄茶です。広大な中国では地域によって栽培される茶葉も好んで飲まれるお茶も異なります。
花茶は花の香りを染み込ませた「龍珠」と花だけの「菊花茶」などに分けられますが、六代茶葉には含まれません。

緑茶

摘みたての緑茶
▲摘みたての緑茶の茶葉は水々しく軟らか。色も青々としている
炒青
▲素手で行う緑茶の釜煎り「炒青」。この行程がお茶の善し悪しを大きく左右する

中国緑茶の代表格、龍井ロンジン茶は今から900年以上前に浙江省杭州市内の「杭州老龍井」と呼ばれる井戸のわきの小さな茶畑で栽培されたのが始まりとされています。
龍井茶の中でも特に有名なのが清明節(4月5日ごろ)の時期に収穫して作る「明前龍井」や「雨前龍井」です。この時期は春の雨が凍えた大地を暖かくよみがえらせ、木々は冬の間に蓄えた養分で翡翠色の新芽を芽吹かせます。木々の精気の結晶であるこの新芽と葉が中国緑茶を代表する「明前」やそれに次ぐ「雨前」となります。
緑茶は手で一芽一葉を丁寧に摘み取ります。摘み取った葉を室内で寝かせた後、熱したなべに入れ、手を使って煎じます。上質の龍井茶は焼き栗にも似た微かな香ばしさとさわやかな風味があります。
入れるときは温度を一定に保つ球形のきゅうすや耐熱のガラスコップに直接茶葉を入れ、摂氏80度のお湯で入れてください。

青茶(烏龍茶)

鳳凰単そう
▲鳳凰単そうは細長い茶葉が特徴。茶葉の木によっても香りが異なる

烏龍ウーロン茶は「青茶」の別称です。青茶は半発酵の茶葉の総称で、緑茶のさわやかさと紅茶の深い味わいの両方を兼ね備えています。ウーロン茶には発酵の度合いが非常に低い「黄金桂」「凍頂烏龍」、発酵の度合いが比較的高い「鳳凰単そう」のほか、発酵の度合いが高いだけでなく焙煎された濃厚な風味を持つ「武夷玉桂」などがあり、その種類はさまざまです。
「鳳凰単そう」は時間をかけて部分発酵させた細長い形のウーロン茶です。このお茶は工夫茶のふるさと広東省潮州市で栽培される「鳳凰茶」の中でも最高級品といわれ、フルーツや花の甘い香りを持つのが特徴です。茶葉は春と冬の2回摘み取ります。緑茶や白茶などは新芽が高級品になりますが、鳳凰単そうなどのウーロン茶は若すぎず古すぎず、開いたばかりの青々とした葉が上質なお茶になります。
「正岩水仙」は武夷岩茶の一種で、武夷山脈の標高500メートル以上の岩山で育つ樹齢30年以上の樹木から採取される高級茶です。
武夷岩茶は高温で数回に分けて焙じます。武夷岩茶の一種「武夷貢品玉桂」などは製造から3〜4ヵ月後に、正岩水仙や「紅袍」は製造後に密閉容器で1年ほど保存すると味、香気、茶性(茶葉が持つ涼性や温性)がより安定します。また製造から3年ほどおいた武夷岩茶は芳醇さが増します。
お湯の温度は茶葉によって微妙に異なります。その都市に製造された貢品玉桂は摂氏90度のお湯で入れますが、年数をおいた茶葉はこれよりやや高温で入れます。滑らかなのど越しと深みのある味わいが楽しめるお茶です。

紅茶

中国紅茶
▲中国紅茶はストレートでいただく

紅茶は18世紀に中国で生産が始まりました。当時の紅茶は研究を重ねた末に生まれたたまもの。製茶に掛ける時間や労力も大変なものでした。中国紅茶が「工夫紅茶」と呼ばれるゆえんは、多大な「工夫ゴンフー」(※)を掛けて作り出されることにあります。
古くからある工夫紅茶のうち、最高級のものはいずれも福建省北部の政和と坦洋が産地です。政和紅茶と坦洋紅茶はともに「白毫尖」と呼ばれる白い産毛を付けた若芽が多く、この白毫尖は発酵後、銀色から黄金色に変わることから「金毛猴(Golden Hair Monkey)」とも呼ばれています。
坦洋工夫茶は黒く光沢があり、お茶の色は明るく、フルーツのような香りとさわやかな甘さがします。入れるときは茶葉は少量にします。ティースプーン1杯の茶葉を100度のお湯で入れ、4分~5分蒸らします。長時間お湯に浸していると味が変化するので、きゅうすの中のお茶は入れきってください。
※中国語で手間・時間の意味

普洱プーアール

普洱茶はワインのように年数を重なるほどにまろやかさが増す
▲普洱茶はワインのように年数を重なるほどにまろやかさが増す

後発酵茶の黒茶、普洱茶の産地は雲南省で、その名は同省にある普洱プーアールという地名からきています。プーアール茶には圧縮してせんべいやラクダのコブのような形に固めた「茶餅」と、固めてない「散茶」があります。茶餅は輸送技術が発達していなかった昔、運搬に便利なように固めたのが始まりです。
プーアール茶は香港で人気の高いお茶です。中でも「金尖普洱」は茶葉選びから製造まで生産者の細やかな心配りが感じられ、包装や保存状態も衛生的なので好まれています。プーアール茶はワインと同じく年代が古いほど価値がありますが、金尖普洱のように丹念に製造されたプーアール茶は十数年も熟成させなくとも馥郁ふくいくたる香りとまろやかな甘さがあり、低級品にありがちな苦味や泥臭さを感じさせません。
入れる際はお湯を摂氏100度に沸騰させます。プーアール茶は漢方で言うところの「寒性」でも「温性」でもない「中性」で、どんな体質の人にも合い、胃を痛めません。整腸作用があり、脂肪の代謝を促し、血中の脂肪酸を減らし、血液の流れを正常な状態に導くとされています。

白茶はくちゃ

白茶の茶水は薄く、味にはほのかな甘みがある
▲白茶の茶水は薄く、味にはほのかな甘みがある

白茶はくちゃは茶葉の若芽を摘み取り、時間をかけてゆっくりとえさせた微発酵茶です。産地は福建省の北部、政和市と福鼎ふくてい市で、19世紀に白茶の樹を改良し、「政和大白」と「福鼎大白」という品種が作られました。これが今日、最も良い味を持つといわれる「白毫銀針」と「白牡丹」の樹です。
白茶は摘み取った葉を20〜40時間かけて自然風で乾燥させます。加熱しないため葉の中の酵素は原質をとどめ、葉の細胞壁の内と外の物質が水分をなくす過程で化学変化を起こし、白茶特有の味と香りが生まれます。そして同時に、体内の酸化とがん細胞の発生を抑制する作用が強められます。近年、欧米で行われた研究でも白茶はポリフェノール(がん細胞の発生を抑制するカテキンなどの総称)の含有量が緑茶よりも高いことが示されているそうです。

黄茶きちゃ

黄茶きちゃは半乾燥の緑茶を高温多湿の場所に積み上げておく「燜黄もんこう」という方法で茶葉を黄色に変色させる後発酵茶です。緑茶同様に低めの摂氏75~90度のお湯で入れます。黄茶は中国でもあまり一般的なお茶ではありませんが、良質なものは芳醇で奥行きのある味わいがあります。
安徽省で生産される「安徽黄小茶」などがよく知られています。安徽黄小茶は摂氏90~95度のやや高めの温度のお湯で入れると風味がさらに引き立ちます。

番外編 ~花茶~ 

龍珠
▲龍珠はジャスミンの香りを染み込ませ、手で丁寧に丸めた花茶

花茶は六大茶葉には含まれませんが、中国や香港では青茶や緑茶と並んでとても人気のあるお茶です。上質な花茶は茶葉自身に花の香りを吸収させて作られていて、茶葉に花びらを混ぜた「加工茶」や、花から抽出した香りを茶葉に吹き付けたものとは製造法が異なります。総称して「龍珠」と呼ばれていますが、産地によってさまざまな名前がつけられていて、味にも香りにも微妙な違いがあります。
花茶の中でも特に高級とされる「白毫小蜜珠」は、福建省の福鼎ふくてい市で清明節(※)の前に
摘み取る「高山福鼎大白」か「福鼎白毫」の繊毛のある若芽を用います。
低温で焙じ、手で丸め、乾燥させて箱に詰めて寝かせた若芽にジャスミンの香りを時間を掛けてゆっくりと染み込ませていきます。
福鼎市に代表される福建省北部は白毫小蜜珠の産地として知られ、同地のジャスミンは特に甘くさわやかな香りを放ちます。花茶を選ぶときは、小粒で缶や袋を開けたときに強く香りを放つものを選んでください。
※清明節は中国や香港など中華圏では墓参りの日、いわゆるお彼岸です。毎年、4月5日がこの日に当たります。

参考文献:『中国茶経』上海文化出版社
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