旧暦の風習   ~春節(旧正月)~

福が来た!
福の字の正月飾りは「到福(福が来るよう)」と呼ばれ、字を逆さまにしてドアに貼る

春節(旧正月)がやって来ます。今年は2月18日が旧暦の大みそか、19日が元旦にあたります。寒い冬は終わりに近づき、季節が春へと動き出すのです。

もちろん、まだまだ寒い日はありますが、「立春」も終わり、春節が過ぎると寒い日が3日、暖かい日が4日、といった具合にいわゆる「三寒四温」が続くようになります。

以前は新暦のお正月に「初春」「新春」という言葉を聞くたびに、こんなに寒いのにどうして「春」なんだろうって不思議に思っていたのですが、大人になって旧暦を知りその言葉の意味を実感した次第です。春節が終わると季節の変化を日に日に肌で感じるようになるからです。

春節は世界中の華人にとって1年で一番大切な日。冬もさほど寒くならない亜熱帯の香港でも、常夏のシンガポールやマレーシアでも、華人は皆、家族そろって春の訪れを祝います。その春節前はまさに師走。お正月用品を売る花市があちこちで開かれ、香港の街は正月準備の買い物客でいつも以上にごった返します。でも混雑なんてなんのその、不機嫌な顔をした人をあまり見かけないのは、やっぱりもうすぐお正月だからなんですね。

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旧暦の風習   ~春節(旧正月)~

開年飯ホーイニンファン利是ライシ
ビクトリア公園の花市。黄金色の金柑(キンカン)は見た目も良く、広東語の金と吉の発音が似ていて縁起がいい

春節までは大人も子供も大忙し。家族総出で赤や黄色のめでたい色の正月飾りや花で部屋を彩り、来客のためにたくさんのおせち料理やお菓子を用意します。もちろん大人はお年玉も用意しないといけません。できればピン札。春節前はお年玉用のピン札を求める人で、銀行の窓口は長蛇の列です。

お年玉は「利是ライシ」と呼ばれ、香港では既婚者が独身者に渡す習慣があります。結構いい年の人でも独身ということだけで会社の上司や取引先の社長からお年玉をもらっています。

おせち料理は広東語では「開年飯ホーイニンファン」と言って元旦に家族そろっていただきます。大みそかに食べる年越し料理は「団年飯トゥンニンファン」と言い、これも家族そろってが基本です。

開年飯は鶏を丸ごと蒸したものや「発財(財を成す)」と同じ発音の髪の毛によく似た海藻のような野菜、「髪菜ファーチョイ」、「余(余る)」と「魚」の発音が似ていることから魚料理も好まれます。

特に鶏を丸ごと使った料理は春節だけでなく、香港では年中行事には欠かせないもの。年配の主婦などは市場で生きた鶏を自分で選んでその場で絞めてもらうのを好みます。いい鶏かどうかはおしりを見ると分かるそうで、おしりにフーッと息を吹きかけて吟味します。

でも、鳥インフルエンザの影響で生きた鶏を売る店は年々減少していて、お正月の家庭料理にもチルドの鶏を使うことが多くなっています。

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新年のあいさつ言葉

恭喜発財(ゴンヘイファーチョイ)
万事如意(ウォンシユウイ)
年年有魚/余(ニンニンヤウユイ)
金玉満堂(ガムユッムーントン)

春節のあいさつ言葉はたくさんあります。これらは香港でよく使われる代表的なものです。上から順番に、お金がたくさん稼げますように、何事も思うように進みますように、毎年余りあるほどの食べ物に恵まれますように、金や玉(ぎょく)で部屋が満ちあふれますように、という意味です。

春節のあいさつは片手でこぶしをつくり、もう片方の手でそのこぶしを包むように重ね、胸の辺りで前後に振りながら「恭喜、恭喜ゴンヘイ、ゴンヘイ」と笑顔で言います。この後、すかさずお年玉を出すとかっこいいですね。

「恭喜発財、万事如意、年年有魚(余)」といった具合に、おめでたい言葉を3つ続けて使うこともあります。どれも財と心の豊かさにつながる縁起の良い言葉です。でも、「金玉満堂」は最初に見たときにドキッとしました。

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縁起よく、威勢よく
獅子舞

春節の初詣は、香港では黄大仙ウォンタイシンが一番有名です。毎年、元旦の零時前にはたくさんの人がびょうの前で門が開くのを待ち、その年で最初の線香を上げる栄誉を競います。テレビでしか見たことはないのですが、これはかなり殺気立っています。暗い中、大勢の人がすでに火が着いた線香を手に押し合いへし合い開門を待つのです。線香の火が髪にでも着いたらどうするの? と思うのですが、みんな洋服や髪の毛が少しくらい燃えても大したこっちゃない、といった感じで、門が開くと同時に廟の前の線香立て目掛けて猛ダッシュ。1年の運気を上げるために、誰もが真剣なのです。

昼間は街に獅子舞も繰り出します。ショッピングモールや大企業のビルなどで見掛けることが多いのですが、これを見ると一気にテンションが上がります。獅子舞のクライマックスは高い所につるした青菜をくわえ取り、口から縁起の良い言葉が書かれた巻物をたらりと開いて大見栄を切る時です。

大見栄と言っても愛きょうのある顔でとてもかわいいのですが、なぜ青菜? と思っていたら、ちゃんと理由がありました。「青菜を採る」は広東語で「採青チャイチン」、北京語では「採青ツァイチン」と言い、いずれも「清を踏みつける」という意味の言葉と同じ発音になります。清朝の支配に苦しめられた漢民族の反抗を表しているそうです。

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